2024.09.21
建材メーカー訴訟
2024年9月20日、札幌地方裁判所民事5部(守山修生裁判長)は、北海道建設アスベスト3陣訴訟について、建材メーカー5社の責任を認め、被害者21名全員を救済する判決を言い渡しました。
敗訴企業であるエーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイの5社は、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められている建材メーカーです。もはやこの5社が責任を免れる余地はありません。
敗訴企業は、早期解決に向けてリーダーシップを取り、直ちに話し合いに応じるべきです。
○日本経済新聞:建設現場で石綿、5社に2億5000万円賠償命令 札幌地裁
○北海道建設アスベスト3陣訴訟札幌地裁判決についての声明(2024年9月20日)(pdf)
2024(令和6)年9月20日
声 明
北海道建設アスベスト第3陣訴訟札幌地裁判決について
北海道建設アスベスト訴訟原告団
北海道建設アスベスト訴訟弁護団
1 本日、札幌地方裁判所(民事第5部 守山修生裁判長)は、北海道建設アスベスト第3陣訴訟における、被災者21名全員のアスベスト被害について、その職種等に応じて株式会社エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント株式会社、ニチアス株式会社、株式会社ノザワ及び株式会社エム・エム・ケイの合計5社のうち、少なくとも1社以上の責任を認める判決を言い渡した。
2 既に最高裁は、2021(令和3)年5月17日の判決において、建材メーカーらに警告表示義務違反があり、被災者のアスベスト疾患の主要な原因となった建材を製造・販売したメーカーのうち一定のシェアを有する建材メーカーらは民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負う旨の判断を示していた。本判決はその判断を踏まえ、本訴訟の被災者に対する上記建材メーカーらの責任を明確にした上で、本件訴訟の原告・被災者全員を救済したものでありその意義は極めて大きい。
3 本日交付された判決要旨によれば、死亡した被災者について最高額2700万円を損害基準金額とするなど、全国の訴訟の判決で示された基準を上回るもので、評価できる。
また、有責とされた企業の基本となる責任割合についても、①石綿暴露期間の観点、②他の企業による寄与の観点の両面から、有責企業の責任割合を減じており、減額がなされたこと自体は遺憾ではあるが、これまでの同種訴訟の判決と比較すると、減額は小さい幅にとどまっているものと思われ、その点では本判決は評価できる。
さらに、判決要旨によれば、責任の始期を北海道建設アスベスト訴訟第1陣と同様、それ以外の同種訴訟の判決より1年早い、1974(昭和49)年1月からとしており、その点は、被害者の救済という点では一歩前進したものと評価できる。
4 他方、判決要旨から推測するかぎりでは、屋外作業または解体作業の職歴を有する被災者について、建材メーカーらの責任を否定し、その職歴に対応して、賠償額について一定の減額を行っているものと判断される。これまでの最高裁の判断ではこれらの建設作業者について建材メーカーらの責任は認められていないとはいえ、屋外作業でも大量のアスベスト粉じんに暴露することは予見可能だったのであり、また解体作業についてもアスベストの危険性を周知することは十分可能だったのに、建材メーカーらがこれを怠ったことは明らかであるから、この点での判断は極めて遺憾である。
5 本判決により前記5社の建材メーカーらの責任はあらためて明確にされた。
これら5社は、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められているにもかかわらず、未だに責任を争い、和解解決にも応じていない。そのような態度は極めて不当であり、速やかに責任を認めて被災者に謝罪し、早期に和解解決すべきである。
また、国は、建設アスベストの被害者救済のため2022(令和4)年2月から給付金制度を開始したが、本件判決において責任が認められなかった建材メーカーらにおい
ても、自らの製造販売した建材が、建設作業者のアスベスト被害の一因となった可能性が十分あるのであるから、有責と判断された5社はもとより、それ以外の建材メーカーらも、その責任を自覚し、速やかに基金制度創設に応じるべきである。
6 われわれ北海道建設アスベスト訴訟原告団・弁護団は、本判決を受けて全国の被災者、労働者、市民と連帯し、建設アスベスト被害者の早期完全救済とアスベスト被害の根絶
のため、全力を尽くす決意をあらたにするものである。
以 上