2024.09.30
建材メーカー訴訟
2024年9月26日、札幌高等裁判所第3民事部(齋藤清文裁判長)は、北海道建設アスベスト2陣訴訟について、建材メーカー3社(エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス)の責任を認め、被害者11名に賠償を命じる判決を言い渡しました。
なお、「押出成形セメント版」に関する事実認定が変更され、2社(ノザワ、エム・エム・ケイ)の責任は否定されましたが、それによって敗訴した原告はいません。むしろ責任を負う企業の寄与度が相対的に上がり、一部原告については慰謝料額が増額しました。
○北海道新聞:建設アスベスト訴訟 3社に賠償命令 2社の責任認めず 札幌高裁判決
○産経新聞:建設石綿訴訟、2審は3社に1億1500万円賠償命令 北海道の集団訴訟第2陣 札幌高裁
○北海道建設アスベスト第2陣訴訟札幌高裁判決について(2024年9月26日)(pdf)
2024(令和6)年9月26日
声 明
北海道建設アスベスト第2陣訴訟札幌高裁判決について
北海道建設アスベスト訴訟原告団
北海道建設アスベスト訴訟弁護団
1 本日、札幌高等裁判所第3民事部(齋藤清文裁判長)は、北海道建設アスベスト第2陣訴訟について、被災者16名のうち11名のアスベスト被害に対する株式会社エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント株式会社、ニチアス株式会社の合計3社の責任を認める判決を言い渡した。
2 既に最高裁は、2021(令和3)年5月17日の判決において、建材メーカーらに警告表示義務違反が認められ、被災者のアスベスト疾患の主要な原因となった建材を製造・販売したメーカーのうち一定のシェアを有する建材メーカーらは民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負う旨の判断を示している。
本日の判決は、この最高裁の判断を前提として、あらためて高裁レベルで本訴訟の被災者11名との関係で建材メーカーの責任を明確にしたものであり、その意義は極めて大きい。
3 他方、本判決は、被災者5名について、建材メーカーの責任を否定した原審判決を維持した。
このうち2名は、主に屋外での作業に従事した被災者と、主に解体作業に従事した被災者である。これまでの最高裁の判断ではこれらの建設作業者について建材メーカーらの責任は認められていないとはいえ、屋外作業でも大量のアスベスト粉じんに暴露することは予見可能だったのであり、また解体作業についてもアスベストの危険性を周知することは十分可能だったのに、建材メーカーらがこれを怠ったことは明らかであるから、本判決の判断は、原告らとしては受け入れることはできない。
4 また、判決は、残る被災者3名についても、被告ら加害企業の製造販売した建材の到達が認められないとして原告らの請求を棄却した原判決の判断をそのまま維持した。しかし本件の被災者は、いずれも長期間にわたり、建設作業の現場において、被告メーカーらが製造販売した建材に含まれる石綿に暴露したことは明らかであるから、かかる判断は不当である。
5 本判決は、有責とされた企業の責任割合を4割ないし5割と判断し、原告らの賠償額を上記割合に応じて減額した。最高裁は、これまで有責企業が負う責任割合については、具体的な基準を示さず、下級審の判断に委ねてきたところではあるが、神奈川第2陣訴訟において、有責企業の責任割合を基本4分の3とする東京高裁の判断を維持した例もあり、本件において有責とされた企業がいずれも建材メーカーの中でも高いシェアを有し、建材メーカーの先頭に立ってアスベスト被害を拡大してきた経過を考えれば、本判決が認定した責任割合は十分とはいえない。
6 本判決により責任があると判断された株式会社エーアンドエーマテリアルほか2社の建材メーカーは、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められているにもかかわらず、未だに責任を争い、和解解決にも応じていない。そのような態度は極めて不当であり、速やかに責任を認めて被災者に謝罪し、早期に和解解決すべきである。
また、本判決では有責とされなかった建材メーカーも、深刻なアスベスト被害をもたらすことを知りながら、被害防止措置を講じないまま、アスベスト含有建材の製造・販売を続けてきたことにかわりはない。したがって、アスベスト建材を製造販売したすべての企業はその責任を自覚し、速やかに基金制度創設に応じるべきである。
7 われわれ北海道建設アスベスト訴訟原告団・弁護団は、本判決を受けて全国の被災者、労働者、市民と連帯し、建設アスベスト被害者の早期完全救済とアスベスト被害の根絶のため、全力を尽くす決意をあらたにするものである。
以上