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東京1陣訴訟差戻審、東京高裁から和解案提示(声明)

2024.12.26

建材メーカー訴訟

2024年12月26日、首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟の差戻審において、東京高裁第24民事部(増田稔裁判長)は、双方に具体的な和解案を提示し、建材メーカーにも早期全面解決に向けた努力をするよう要望しました。

東京1陣訴訟は、2008年5月の提訴からすでに16年が経過し、すでに9割以上の原告が亡くなっています。
建材メーカーは、本和解案の重みを自覚し、これを受け入れ早期全面解決に踏み出すべきです。


声明(東京1陣訴訟差戻審の「和解案」提示にあたって)(pdf)


声    明

(東京1陣訴訟差戻審の「和解案」提示にあたって)


1 本日、建設アスベスト東京1陣訴訟の差戻審(東京高等裁判所第24民事部)は具体的な和解案を当事者に示した。本差戻審は、昨年2023年10月10日に結審したが、同日、増田稔裁判長は「本件事案は和解での解決が望ましい」と表明していた。本日和解期日が法廷にて開かれて、裁判所は別紙含めて1100ページにわたる書面をもって、個々の一審原告ごとに具体的な和解金額を示した和解案を提示した。

2 一審原告らは、2008(平成20)年5月16日に、国及び建材メーカーらを被告として東京地裁に提訴して以降13年の審理を経て、2021(令和3)年5月17日に最高裁判決を得た(東京1陣、神奈川1陣、京都1陣、大阪1陣の各訴訟判決)。

  この最高裁判決は、国の国家賠償責任を肯定するとともに、建材メーカーらに対しても、石綿建材を製造販売する際に当該建材が石綿を含有しており当該建材から生ずる粉じんを吸入すると肺ガン・中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を表示する義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかった過失があること、民法719条1項後段が類推適用されて建材メーカーらには共同不法行為責任が成立する場合があると判断した。

3 差戻前の東京高裁判決が、建材メーカーらの製造販売した石綿建材が本件被災者の作業する現場に相当回数到達していたとの事実(建材現場到達事実)が立証されていないとした判断を、東京1陣最高裁判決は、経験則又は採証法則に反する違法があるとした。そして、同最高裁判決は一審原告らの本件立証手法により石綿建材について建材現場に到達したことを立証し得るとして破棄し、東京高裁に差戻した。

  この差戻審は、2年半にわたる審理を経て結審し、本日、具体的な和解案を提示した。裁判長は、和解案の説明の冒頭に、「被災者の多数がお亡くなりになっており、本和解案は早期全面解決を願って提案したものである。最終の事実審裁判所による和解案であるということを踏まえて被控訴人らも早期解決に向けて努力されるよう要望する。」旨を述べた。

4 本和解案の対象は、一審原告347名(被災者285名。( )内は以下同じ。)のうち解体工等を除く306名(253名)である。そして、和解案の具体的な内容は、建材メーカー12社のうち7社(エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ナイガイ、ニチアス、日東紡績、ノザワ、エム・エム・ケイ)に対して一審原告ら282名(233名)に総額金40億2956万円の和解金を支払えというものであった。

  本和解案の特徴は、全ての建材メーカーらに警告義務違反を認めたこと、概ね10%のシェアを有する建材メーカーについては建材が現場に到達した事実を認めたこと、建材メーカーの基本寄与度を40%から50%と認めたこと、基本慰謝料額を建設アスベスト給付金と同一額を認めたことであり、この点は評価できる。

  なお、改修・解体作業での石綿粉じん曝露を中心とする解体工等の一審原告41名(32名)については、2022(令和4)年6月3日の神奈川2陣最高裁判決が解体作業従事者に対する建材メーカーらの警告表示義務を否定するという誤った判断をしたが、これを是正するには差戻審をはじめとする同種訴訟で適正な判決を得る必要があることから、本和解案の対象にはされておらず、今後、差戻審において判決が言い渡される予定である。

5 提訴から最高裁判決まで約13年、差戻審の本和解所見(提案)に至るまでに約16年経過し、一審原告らのうち既に9割以上が亡くなっている。これ以上の解決の先延ばしは非人道的であり許されない。

  また、本和解案は、差戻審での2年半にわたる審理と結審から本日の和解所見提示まで1年を要して出されたものであることから、われわれは判決と同等の重みをもつものとしてその重大性を真摯に受け止め、可能な限り早期に和解案に対するわれわれの態度を表明する所存である。

6 建材メーカーらに対しては、最高裁判決後の差戻審の和解案であるという重みを踏まえて本和案を検討することを求める。一審被告メーカーらがいたずらに本和解所見を拒否し判決を選択すれば、さらに解決が引き延ばされる事態となる。このような事態は、非人道的であり、企業の社会的責任を放棄するもので到底許されるべきではない。

7 国との関係では、いわゆる建設アスベスト給付金法が成立し、これまで7794名(2024年12月18日現在)を超える被害者が認定され、建設アスベスト基金から給付金が支給されているが、建材メーカーは同基金に拠出していない。他方、同法附則2条では、国以外の者による被害者への損害賠償のその他の補償の在り方について国は検討のうえ所要の必要な措置をとると明記されている。全国の同種訴訟のなかでも被災者数が最大規模であり、建設作業の職種も多岐にわたる東京1陣訴訟において、建材メーカーらとの和解が成立すれば、建材メーカーらも参加する建設アスベスト補償基金制度創設への大きな前進となることが期待できる。

8 建材メーカーらに対して、裁判所が早期全面解決を呼びかけて出した本和解案の重みを自覚し、これを受け入れることを強く求める。国民の皆さまに和解成立に向けての支援と協力を呼びかけるものである。

                           2024年12月26日

首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟原告団

首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟弁護団

首都圏建設アスベスト訴訟統一本部