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東京2陣訴訟、東京高裁も和解案提示(声明)

2025.01.31

建材メーカー訴訟

2025年1月31日、首都圏建設アスベスト東京2陣訴訟において、東京高裁第17民事部(吉田徹裁判長)は、双方に具体的な和解案を提示しました。
2024年末の東京1陣訴訟差戻審における東京高裁に続く、連弾での和解案提示です。


吉田裁判長は、冒頭で「被災者の高齢化が著しく心身の負担が大きく、亡くなられる方も多くなっており、一刻も早い被害回復が求められている。後続訴訟を含めて早期解決が図られることを期待しつつ、東京1陣訴訟とほぼ同一内容の和解案を示したものである」と踏み込んだ見解を述べました。

建材メーカーは、東京高裁における2つの和解案の重みを自覚し、これを受け入れ早期全面解決に踏み出すべきです。

声明(東京2陣訴訟控訴審裁判所の「和解案」提示にあたって)(pdf)

声     明
(東京2陣訴訟控訴審裁判所の「和解案」提示にあたって)


1 本日、東京高等裁判所第17 民事部(吉田徹裁判長)は、建設アスベスト東京2陣訴訟の控訴審において具体的な和解案を当事者に示した。本控訴審は、昨年2024 年3 月1 日に結審したが、同日、早期解決を求める一審原告らの意見等を踏まえ、和解勧告を検討すると表明しており、本日の和解期日において、個々の一審原告ごとに具体的な和解金額を示した和解案を提示したものである。

 昨年12 月26 日に、建設アスベスト東京1陣訴訟の差戻審において、東京高等裁判所第24 民事部が和解案を示したのに続き、1か月の間に連弾で和解案が示された。
2 一審原告らは、2008(平成20)年5 月16 日に提訴された東京1陣訴訟に続き、2014(平成26)年5 月15 日に、国及び建材メーカーらを被告として東京地裁に提訴し、2020(令和2)年9 月4 日、原告らの請求を一部認容し国及び建材メーカーらの責任を認める第1審判決が出されたが、一審原告、一審被告双方が控訴して、東京高等裁判所で審理が行われてきたものである。
 この間、東京1陣訴訟等に関し、2021(令和3)年5 月17 日に最高裁判決が出され、国の国家賠償責任を肯定するとともに、建材メーカーらに対しても、石綿建材を製造販売する際に当該建材が石綿を含有しており当該建材から生ずる粉じんを吸入すると肺ガン・中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を表示する義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかった過失があり、民法719 条1 項後段が類推適用されて建材メーカーらに共同不法行為責任が成立する場合があるとの判断が示された。
3 本控訴審は、この最高裁判決も踏まえ、約2年半にわたる審理を経て結審し、本日、具体的な和解案を提示した。裁判長は、和解案の説明の冒頭に、「全国で1100 名を超える原告について各地で同種訴訟の審理が行われてきたが、これらの判決で、どのメーカーに責任が認められるかや損害額について、ほぼ同一の内容に収れんされつつある。300 人の原告を抱える東京1陣訴訟の和解案も概ね同様の判断傾向に沿うものであった。被災者の高齢化が著しく心身の負担が大きく、亡くなられる方も多くなっており、一刻も早い被害回復が求められている。後続訴訟を含めて早期解決が図られることを期待しつつ、東京1陣訴訟とほぼ同一内容の和解案を示したものである。」旨を述べた。
4 本和解案の対象は、一審原告126 名(被災者112 名。( )内は以下同じ。)のうち解体工等を除く109 名(98 名)である。そして、和解案の具体的な内容は、建材メーカー18社のうち5社(エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイ)に対して、一審原告ら93 名(82 名)に総額金11 億3158 万円の和解金を支払えというものであった。
 なお、改修・解体作業及び屋外作業での石綿粉じん曝露を中心とする解体工、板金工等の一審原告17 名(14 名)については、2021(令和3)年5 月17 日の上記最高裁判決が屋外作業者に対する建材メーカーらの責任を否定し、さらに、2022(令和4)年6 月3 日の神奈川2陣最高裁判決が解体作業従事者に対する建材メーカーらの警告表示義務を否定するという誤った判断をしたが、これを是正するには適正な判決を得る必要があることから、本和解案の対象にはされておらず、今後、判決が言い渡される予定である。
5 われわれは、先に示された東京1陣和解案は、一部一審原告らの請求を認容しないなどの問題点がありつつも、最終の事実審裁判所による和解案であって判決と同等の重みをもつことを真摯に受け止め、何よりも早期解決を目指すため、これを受け入れることを決定した。そして、本和解案もまた、上記最高裁判決を踏まえ、2年半にわたる審理と結審から本日の和解所見提示まで約11 カ月を要して出されたものであることから、その重大性を真摯に受け止め、可能な限り早期に本和解案に対するわれわれの態度を表明する所存である。
6 提訴から本日の本和解案の提示に至るまでに約10 年8 か月が経過し、一審原告らのうち既に8割以上が亡くなっている。これ以上の解決の先延ばしは許されない。
 東京1陣訴訟差戻審に続き、約1 カ月の間に連弾で本和解案が示されたことは、早期解決を求める一審原告らの要求が正当なものであることを裁判所が表明していると言えるのであって、建材メーカーらは、このことの重みを十分に踏まえて本和解案を受け入れることを求める。建材メーカーらがいたずらに本和解案を拒否し判決を選択することは、解決の引き延ばしにほかならず、このような事態は、非人道的であり、企業の社会的責任を放棄するもので到底許されるものではない。
7 国との関係では、いわゆる建設アスベスト給付金法が成立し、これまで7,918 名(2025年1 月22 日現在)の被害者が認定され、建設アスベスト基金から給付金が支給されているが、建材メーカーは同基金に拠出していない。他方、同法附則2条では、国以外の者による被害者への損害賠償のその他の補償の在り方について国は検討のうえ所要の必要な措置をとると明記されている。全国の同種訴訟のなかでも被災者数が最大規模である東京1陣訴訟と、これに準ずる規模である東京2陣訴訟を合わせれば全国の原告数の約3分の1に及ぶのであって、建材メーカーらとの和解が成立すれば、建材メーカーらも参加する建設アスベスト補償基金制度創設への大きな前進となることが期待できる。
8 われわれは、今回の2つの和解案提示をてこにして、建設アスベスト訴訟の早期全面解決と給付金法改正を求める取組を一層強化していく。国民の皆さまには、和解成立と給付金法改正によるアスベスト被害者の早期全面救済に向けての支援と協力を呼びかけるものである。
                                 2025 年1 月31 日

                           首都圏建設アスベスト東京2陣訴訟原告団                         
                           首都圏建設アスベスト東京2陣訴訟弁護団
                              首都圏建設アスベスト訴訟統一本部