2025.03.12
建材メーカー訴訟
2025年2月18日、関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟において、大阪高裁第5民事部(徳岡由美子裁判長)は、原被告双方に具体的な和解案を提示しました。
責任が認められる建材メーカー12社に対し、高い水準の賠償案を提示しただけでなく、責任が認められないとした9社に対しても、一定の解決金等の支払いを求める和解案には、「全面的終局解決」へ向けた裁判所の強いメッセージが込められています。
原告は、2025年3月9日、全員が受け入れを表明しました。
建材メーカーは、東京1陣訴訟差戻審、東京2陣訴訟の2つの東京高裁に続く、3連続での和解案提示を真摯に受け止め、今こそ早期解決を決断すべきです。
○声明(関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟控訴審裁判所の和解案提示を受けて)(pdf)
○大阪アスベスト弁護団:【建設アスベスト】大阪高裁より和解案の提示(大阪2陣・3陣訴訟)
声 明
関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟控訴審裁判所の和解案提示を受けて
2025(令和7)年3月9日
関西建設アスベスト大阪訴訟原告団・弁護団
関西建設アスベスト訴訟統一本部
1 2025(令和7)年2月18日、大阪高等裁判所第5民事部(徳岡由美子裁判長)は、関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟において、原被告双方に対して和解案を提示した。この和解案は、訴訟が2024(令和6)年12月17日に結審した後、一審原告らの早期解決を求める強い要望を受けて、裁判所が、個々の一審原告ごとに和解金額を示すなど極めて具体的な内容となっている。
全国的には、裁判所による全面的な和解案の提示は、昨年12月26日の建設アスベスト東京1陣訴訟差戻審、本年1月31日の東京2陣訴訟控訴審に続くものである。
2 本和解案では、被災者73名中67名に対し、一審被告建材メーカー12社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイ、日鉄ケミカル&マテリアル、太平洋セメント、大建工業、日東紡績、パナソニック、神島化学、日本インシュレーション、積水化学)の責任を認め、賠償金の支払いを求めている。加えて、責任が認められないとした一審被告建材メーカー9社(AGC、旭トステム、ウベボード、クボタ、ケイミュー、住友大阪セメント、東レACE、ナイガイ、バルカー)に対しても、「事件の早期の全面的解決を図る」ために、「事案に鑑みて一定の解決金ないし見舞金(1社当たり300万円を基本とする。)」を支払うことを求めている。一審被告建材メーカー12社に対して示された和解金総額は12億4972万8434円に上る。
3 本和解案は、2023(令和5)年6月30日に言い渡された地裁判決(以下、「原判決」という。)の判断を概ね維持した。すなわち、原判決で責任が認められた一審被告建材メーカーらの共同不法行為責任をあらためて認定し、上記12社の責任を一層明確なものとした。また、注意義務の始期を早い時点で認定するなどして救済対象を広げた原判決の判断を是認し、石綿疾患により死亡した被災者の慰謝料額を2950万円とするなどアスベスト被害の深刻さを受け止めた原判決の判断も維持している。
加えて、原判決では主要原因建材が被災者に到達したとは認められないとして請求が棄却された被災者3名についても一審被告建材メーカーらの責任を認め、また個別の被災者7名の被害に対する一審被告建材メーカーらの寄与度を原判決から引き上げるなど、原判決を実態に即して見直している。
さらに、責任が認められないとした一審被告建材メーカーら9社に対しても一定の解決金等の支払を求めた点は、全国の建設アスベスト訴訟において初めてであり、これは、全面的終局的解決に向けた裁判所の強いメッセージである。
4 一方で、本和解案は、原判決と同様に、外装材を取り扱う職種の被災者や解体作業関係に従事した被災者計6名について、一審被告建材メーカーらの責任を否定した。
外装材についても、外装材メーカーらが、自社が製造する建材に石綿が含有されている事実や石綿疾患罹患の危険性等を警告するなどして被害を防止することは可能であって、そのような対策を一切怠っていた外装材メーカーらの責任を否定することは誤りである。
また、解体作業に従事した被災者らも、石綿建材の危険性について知らされないまま、建設現場で石綿粉じんにばく露した事実に変わりはない。これらの被災者についても、被害の救済や公平の見地及び建設アスベスト訴訟の特質に即した判断が求められるところであり、これらを十分に考慮しているとはいえない。
5 本訴訟は、2016(平成28)年の提訴後約9年が経過し、被災者77名(うち4名については訴訟終了)のうちすでに57名が亡くなっている(うち提訴後に亡くなった被災者は27名に及ぶ)。一審原告らの「命あるうちに救済を」の願いは切実である。そのため、一審原告らは、不本意な点はあるものの、本和解案を受け入れることを表明する。
一審被告建材メーカーらは、一部を除き、最高裁判決を含めて何度も敗訴判決を受けているにもかかわらず、未だに争う姿勢を崩していないが、約2ヶ月の短時間に東京高裁と大阪高裁において3連続で具体的な和解案が示された今こそ、全面的終局的解決を決断すべきである。一審被告建材メーカーらは、本和解案の重みを真摯に受け止め、被災者らに謝罪するとともに、一審原告らとの和解に応じて直ちに賠償金・解決金等を支払うべきである。
6 同時に、大阪4陣、5陣訴訟をはじめ、全国の建設アスベスト訴訟の早期の全面解決を決断し、本和解案で有責とされた上記12社はもちろんのこと、解決金等の支払を求められた9社を含む石綿建材を製造販売していたすべての建材メーカーらは、建設アスベスト被害の全面救済へ向けて「建設アスベスト被害補償基金制度」(仮称)に資金拠出をすべきである。
7 私たちは、アスベスト被害の救済と根絶のため、全国の被災者、支援者、市民らと連帯して、引き続き全力を尽くす決意を新たにするものである。また、本和解成立と基金制度の創設による建設アスベスト被害者の早期全面解決に向けて、広く支援と協力を呼びかけるものである。
以上