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学校アスベスト被害、中皮腫の公務災害を認める逆転勝訴判決

2025.06.12

関連情報

東日本アスベスト被害救済弁護団が担当した中皮腫の公務災害不認定取消訴訟事件(東京高裁)について、同弁護団の山岡遥平弁護士から以下の報告がありました。

多くの学校アスベスト被害が埋もれていると考えられる中、公務災害として認められた貴重な事例です。


【山梨県の技術専門学校中皮腫事件、高裁逆転勝訴】

被災者は昭和48年4月から昭和56年3月までの間、山梨県内の技能専門学校において電気工事の指導員として勤務していたところ、昭和62年2月、悪性胸膜中皮腫と診断され、同年9月に死亡した。

被災者の妻は、日常の多忙さなどから公務災害申請ができていなかったところ、平成終盤に至ってようやく申請したが、平成29年に公務外となり、審査請求、再審査請求も実を結ばず、令和2年、提訴に至った。


訴訟において、一番の難点はばく露実態の立証であった。非常に古い事案で、①建物によるばく露、②実習先でのばく露、③校内の授業での資材からのばく露などが考えられた。


①については、設計図面を取り寄せ、また、後の改装工事の写真を専門家に検討してもらい、倉庫等に吹付があることを明らかにした。

②については、元生徒からの聞き取りにより、実習先が一定程度明らかになっていたところ、実習先が公共施設であったことから情報公開請求で図面を取り寄せ、石綿建材をピックアップした上、協力者(及び敵性証人)からの証言で、少なくともボード類の切断作業との混在作業であったこと、同じ現場で吹付けもあり得たことの立証を行った。

③については、文献等から電線での使用を追及した。


この中でも、最大のポイントは②であった。

一審の東京地裁判決は、②の混在作業を認めながらも、被災者との位置関係等が不明であるなどとしてばく露を否定していた上、吹付けについても、敵性証人の「封じ込めをしていた」という到底あり得ない証言を容れてばく露を否定した。


控訴審の東京高裁判決は、上記ボード切断との混在作業、電動工具による粉じんの多さ、吹付けの可能性もあったことから、環境ばく露を超えるばく露があるとして、中皮腫と公務との因果関係を認めた。

一審判決がばく露を否定した事情についても、「校外実習先の建築工事現場において校外実習が行われた場所と建材の切断等の作業の場所との位置関係、建材の切断等の作業の時間や方法、切断等がされた建材の量、含まれる石綿の種類などが具体的に明らかでないことや、原審A証人が校外実習先の工事現場で飛散していた粉じんに石綿粉じんが含まれるかはわからない旨供述していることは、当時におけるこの種の事情の詳細が時間の経過等によって現時点において不明となることが特に不審でない」として、環境ばく露と異なることを否定する事情にあたらない、としている。


本訴訟は、建設アスベスト訴訟ほか、これまでのアスベスト訴訟で積み上げられてきた間接ばく露に関する知見が生かされ、無事に高裁で逆転できたものだ。