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給付金の減額分について国と勝訴的和解

2025.10.21

国との和解

北海道アスベスト被害者支援弁護団が担当した建設アスベスト給付金の減額分を請求する国賠訴訟(釧路地方裁判所)の和解について、同弁護団の桑島良彰弁護士から以下の報告がありました。

肺がんで就労期間が10年未満と判断されたため、減額された給付金10%分を裁判上の和解で勝ち取った事例です。


【給付金の減額分請求訴訟についてのご報告】

1 北海道アスベスト被害者支援弁護団で担当していた建設アスベスト給付金請求に関して、令和7年  3月11日、釧路地方裁判所において、給付金請求段階では短期就労とされて減額された額を国が支払うとの和解が成立しました。当該訴訟等についてご報告致します。

2 本件原告であったXさんは、内装工として釧路市内で働き、アスベスト粉じんにばく露して肺がんに罹患された方です。

  Xさんは、一人親方として労災に特別加入しておられたところ、労災の請求や、建設アスベスト給付金の請求は労働組合の援助を受けながらご自身で行われ、概ね認められるという結果となりました。

しかし、建設アスベスト給付金の請求にあたっては、申請されていた一部の職歴が認められず、4年8カ月しか就労していないという取り扱いとなってしまいました。

  建設アスベスト給付金制度では、労災認定を受けた方については、アスベスト粉じんにばく露した建設作業従事期間等についての情報提供サービスがありますが、これは、労災手続きの記録等をもとに判断されています。

  そして、一人親方等の建設作業従事者が特別加入していない期間については、労基署で調査がされないことが多いため、Xさんの就労期間が実際よりも短く認定されてしまったのです。

  この結果、Xさんの建設アスベスト給付金請求においては、建設作業従事期間が所定の期間(肺がんの場合10年)に満たないものとして、支給額が1割減額されてしまいました。

3 しかしながら、Xさんは、一人親方として長期間建設作業に従事されており、実際には情報提供サービスにおいて認められた期間の倍以上の期間、内装工として働いていました。このため、建設作業従事者としての就労期間が10年間未満であることはありえない状況でした。

  そこで、Xさんから、支給されなかった建設アスベスト給付金の減額分を請求することについて、北海道アスベスト被害者支援弁護団にご相談いただきました。

  当弁護団ではこの減額分について、国家賠償請求訴訟の形で請求をすることとし、令和5年7月18日に、国を被告として、釧路地裁において、訴訟を提起しました。

4 訴訟において国は、Xさんが一人親方として働いていたことが確認できる客観的資料(雇用保険の加入記録など)がないことを理由に、資料がない期間については、一切就労していたことが認められないとの対応を行い、その態度を全く変えませんでした。

  このため、訴訟を進めた結果、最終的にはXさんが一人親方時代に実際に内装工として働いていたかどうかを、裁判所に判断してもらうしかないということになりました。

5 裁判所の判断をもらうために、Xさんは、裁判所において当事者(原告本人)として証言をしました。そして、Xさんの証言を確認した釧路地方裁判所は、その他の証拠も含めて検討し、Xさんが内装工として10年以上働いていたと認められるとの心証を示すに至りました。

  裁判所の示した心証を前提に、国はXさんに対して、建設アスベスト給付金のうち、支給されなかった減額分を支払うことを決め、令和7年3月11日の期日において、Xさんと国との間で和解が成立しました。訴訟提起から1年半程度が経過していました。

  これは、事実上、減額される理由がないというXさんの請求が認められたものであり、勝訴的な和解であるといえます。

6 建設アスベスト給付金制度では、労災認定を受けた方の利便性を図るため、事前の手続きとして情報提供サービスが利用されています。 

  しかし、前述のように、情報提供サービスでは、労災手続きの記録を前提として判断がなされます。結果として、雇用されていた立場ではない一人親方等の期間については、労災保険特別加入制度を利用していない限り、建設作業に従事していた記録が一切ないということも珍しくありません。

  このため、情報提供サービスの結果を前提に建設アスベスト給付金の請求を行うと、本来の就労期間より短い就労期間が認定されて、給付金額が減額されることがあります。

  今回のXさんの件のように、就労期間を理由とする減額については、国に訴訟を提起することにより、実際の就労状態が認定され、減額分の支払いを受けられることがあります。

  これらの事件については、北海道アスベスト被害者支援弁護団だけでなく、全国のアスベスト弁護団において、できる限り多くの方が、正当な給付を受けられるように対応を続けています。

  ご自身で給付金請求をしたけれども、減額されてしまったなどのご事情がありましたら、ぜひ一度、私たち建設アスベスト訴訟全国弁護団までご相談ください。