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体育館の吹付材によるアスベスト被害、控訴審も北九州市と会社の責任認める判決

2022.03.25

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2022年3月24日、福岡高等裁判所(森冨義明裁判長)は、北九州市立体育館の設備管理業務に従事し、石綿による肺がんで亡くなった被害者について、体育館の所有者である北九州市の営造物責任と、勤務先会社である太平ビルサービス㈱の安全配慮義務違反を認め、一審判決に続き約2580万円の支払いを命じました。

国家賠償法2条1項により建物所有者である自治体を含む公共団体の管理責任を認めた高裁判決は初めてで、画期的です。


被害者は、1990年から2005年まで15年間、ビルメンテナンス会社である太平ビルサービス㈱の従業員として、同社が北九州市などから委託されていた体育館の施設、設備の点検・保守・管理業務に従事し、その現場の作業責任者をしていました。体育館の機械室やアリーナなどの壁や天井には、吹付けロックウールや保温材などの石綿含有建材が多く使用されており、吹付材が劣化して剥がれ落ちたり、改修工事の際に大量の石綿粉じんが飛散していました。被害者は作業中にアスベストを吸い込み、2005年に肺がんを発症し退職。その後、2013年に78歳で亡くなりました。


高裁判決は、遅くとも被害者が勤務を始めた当時(1990年5月)には、吹付けロックウールを含む吹付材の危険性や除去等の必要性が世間一般に認識されていたと判断した一審判決を支持。一審判決は、北九州市が石綿含有建材を除去するなどの飛散防止対策を講じず、吹付けロックウールが使用されていることを把握しながら、管理会社等に知らせて注意喚起したり、防じんマスク着用などの対策を指導することもなかった等と、所有者としての管理責任を厳しく認めていました。


勤務先会社についても、「吹付けロックウールが使用されている建築物の保守・管理等を依頼されたビルメンテナンス業者は、石綿粉じんにばく露することにより、そこで作業に従事する従業員の安全性に疑念を抱かせる程度の危険性を認識することは十分可能であった」として、安全配慮義務違反を認めた一審判決を是認しています。


また、被害者の直接の死因はARDS(呼吸不全症候群)であったため、市や会社は因果関係を争っていました。しかし、高裁判決は、石綿肺や肺がんによる肺機能低下に伴い全身症状が悪化したことによってARDSを発症したという経過から、「石綿粉じん曝露と死亡との因果関係を否定することはできない」とし、減額も認めませんでした。


この裁判は、九州建設アスベスト弁護団のメンバーが担当しています。

○NHK北九州:アスベスト裁判 2審も北九州市と会社に賠償命じる福岡高裁(外部リンク)

○毎日新聞:アスベスト訴訟控訴審も北九州市に賠償命令 福岡高裁(外部リンク)

○西日本新聞:北九州市石綿訴訟、二審も市側が敗訴 福岡高裁、市側の控訴を棄却(外部リンク)

○北九州朝日放送:北九州市アスベスト訴訟 市などの控訴を棄却(外部リンク)