ここでは建設現場で働いてアスベスト被害にあわれた方やそのご遺族を念頭に、補償・救済手続きについてご説明します。
労災認定・石綿救済法認定を受けた方やそのご遺族へ
労災認定・石綿救済法認定を受けた方は、その給付に加えて、国や建材メーカーから賠償金(給付金)を受け取れる可能性があります。
労災認定・石綿救済法認定を受けていない方やそのご遺族へ
石綿による病気(中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚など)と診断された方やそのご遺族は、一定の要件を満たせば、労災保険もしくは石綿救済法による給付が受けられます。
よくある相談事例とポイント
いずれの手続きも請求期限(時効)がありますので、お早めにご相談ください。
補償・救済手続きのイメージ図
建材メーカーからの賠償金
国からの給付金(建設アスベスト給付金)
労災補償または石綿救済法の給付
精神的苦痛に対する「慰謝料」
医療費・休業補償・療養手当など
労災認定・石綿救済法認定を
受けた方やそのご遺族へ
労災・石綿救済法の給付に加えて、
国や建材メーカーから賠償金(給付金)を受け取れる可能性があります。
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事例1
大工一筋50年。
中皮腫と診断され、療養中です。最近、労災認定されました。 -
事例2
電工だった夫が、3年前に石綿による肺がんで死亡。労災認定(遺族年金)を受けています。
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事例3
左官だった父が石綿肺で死亡。
生前、石綿救済法の認定を受けていました。
1. 建設アスベスト給付金制度(国からの給付金)
建設アスベスト給付金制度に基づき、症状等に応じて、国から550~1300万円の給付金を受け取れる可能性があります。
労災認定・石綿救済法認定を受ければ、医療費等一定の給付が受けられますが、病気による苦しみや無念の死に対する「慰謝料」は支払われません。建設アスベスト給付金制度による国からの給付金は、建設アスベスト被害を発生・拡大させた国の責任に基づく「慰謝料」(賠償金)です。
- じん肺管理区分決定(管理2~4)を受けた方も、給付金を受け取れる可能性があります。
- 労災認定・石綿救済法認定を受けていない方でも、給付金制度の対象となる場合があります。
- 労災支給決定等情報提供サービスを申請した結果、「非該当」と通知された方でも、給付金の対象となる可能性があります。
2. 建材メーカーからの賠償金
国からの給付金とは別に、建材メーカーを被告として訴訟を提起し、建材メーカーから賠償金を受け取れる可能性があります。
建材メーカーは、アスベストの危険性を知りながら、大量のアスベスト建材を製造・販売し、利益を上げ続けた、最大の加害者です。
国からの給付金は、建設アスベスト被害者の損害の一部を補填するものに過ぎません。
これまでの判決では、建材メーカーに対し、被害者1人当たり数百万円~2000万円程度の賠償責任が認められています。
建材メーカーの責任(最高裁判決)
最高裁判決は、建材メーカーが、警告もせずに危険なアスベスト建材を製造・販売したこと(警告表示義務違反)を違法とし、被害者ごとに、一定の高いシェアを有していた建材メーカーの共同不法行為責任(連帯責任)を認めました。
責任が確定した建材メーカー
エーアンドエーマテリアル、神島化学工業、日鉄ケミカル&マテリアル、大建工業、太平洋セメント、ニチアス、日東紡績、バルカー、ノザワ、エム・エム・ケイ、ケイミュー
これからの建材メーカー訴訟
最高裁判決を受けて、国が、広く被害者を救済する制度を創設したのに対し、建材メーカーは、救済に背を向けたままです。現在行われている裁判の和解にも応じず、制度創設にも参加しようとしません。
そのため、建材メーカーから、「慰謝料」(賠償金)を受け取るためには、損害賠償請求訴訟を起こすことが必要です。
すでに多くの被害者の方々が、建材メーカーに勝訴し、賠償金を受け取っておられます。また、これからの建材メーカー訴訟には、最高裁判決による勝訴の道筋がついています。
建材メーカーの責任を追及することは、建材メーカーからも速やかに賠償金を受け取れるような制度創設を目指すうえでも重要な意義があります。
私たち弁護団では、建材メーカーに対する勝訴の見込みの高い方には、給付金の請求と合わせて、建材メーカー訴訟の提起をご案内しています。
労災認定・石綿救済法認定を
受けていない方やそのご遺族へ
まずは、労災認定・石綿救済法認定が受けられるかどうか検討しましょう。
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事例1
内装工です。
中皮腫と診断され、療養中です。長年、一人親方でした。 -
事例2
塗装店の経営者。
びまん性胸膜肥厚と診断されました。若い頃は現場で働いていました。 -
事例3
配管工だった父が、7年前に肺がんで死亡。石綿が原因だったかも……と気になってます。
1. 労災保険による給付
労働者(雇用されていた)期間もしくは労災保険の特別加入期間の仕事が原因で、石綿による病気になった場合、一定の要件を満たせば、労災保険による補償が受けられます。
発症した時、仕事をしていたかどうかは関係ありません。
長年、一人親方や事業主として働いてきた方でも、過去の労働者期間・特別加入期間が証明できれば、労災認定される場合があります。
対象になる病気
労災保険の対象になる病気は、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水です。
病気によって労災認定基準(石綿ばく露期間や医学的根拠)が異なります。詳しくは、厚生労働省のリーフレットをご覧下さい。
給付内容
療養期間中の医療費、休業補償のほか、石綿による病気で亡くなられた場合、葬祭料、遺族補償給付(年金または一時金)も受けられます。
請求期限
給付内容によって、2年または5年の期間制限(時効)があります。
死亡後5年を経過した場合でも、労災時効救済制度により特別遺族給付金が受けられる場合があります。
労災申請の手続き
労災の申請は、労働基準監督署(労基署)に必要な書類を提出して行います。提出する書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
多くの建設作業者は、複数の事業主の下を転々とし、元請は現場ごとに変わります。まして、20年、30年前の職歴や石綿ばく露作業を思い出し、証拠を集めるのは大変です。
また、労災申請のために労基署に提出した書類は、国や建材メーカーに賠償金(給付金)を請求する時の重要な資料にもなります。
何から手を着ければ良いか分からないという方も、まずはご相談ください。私たち弁護団は、建設アスベスト訴訟の経験を踏まえ、国や建材メーカーへの請求も見越して、必要な聴き取りや証拠集めをサポートします。
2. 石綿救済法(石綿健康被害救済法)による給付
石綿による病気になった方は、労災保険の対象とならない場合(例えば、長年、一人親方や事業主として働いてきた方や、労働者期間の証明ができない方)であっても、一定の要件を満たせば、石綿救済法による給付が受けられます。
対象になる病気
石綿救済法の対象になる病気は、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚です。
労災保険と異なり良性石綿胸水は対象外で、肺がん、石綿肺の認定基準は、労災の認定基準より厳しくなっています。詳しくは、環境再生保全機構のリーフレットをご覧下さい。
給付内容
療養期間中の医療費と療養手当が支給されます。
石綿による病気で亡くなられた場合、遺族に対して、弔慰金、葬祭料等が支給される場合があります。労災保険と異なり、遺族(補償)年金はありません。
※石綿救済法による給付は、労災保険に比べ、内容・支給額ともに不十分です。私たち弁護団は、石綿救済法の抜本的改正を求めています。
請求期限
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(石綿救済法の申請を行わずに石綿による病気で亡くなられた方の遺族への給付)は原則死亡日の翌日から15年、それ以外は2年の請求期限(時効)があります。
療養手当は、療養期間中の患者さんご本人しか請求できません。労災保険と異なり遺族が未支給の給付を請求することはできません。少しでも安心して治療を受けるためにも、早めに申請しましょう。
石綿救済法申請の手続き
石綿救済法の申請は、独立行政法人環境再生保全機構・環境省地方環境事務所もしくは保健所等に必要な書類を提出して行います。提出する書類は、独立行政法人環境再生保全機構のホームページからダウンロードすることができます。
中皮腫の場合でも、申請から認定まで、最短3か月ほどかかります。労災申請と同時に申請することもできます(両方の制度から同時に給付を受けることはできず、後日給付調整がなされます)。
労災認定とは異なり、石綿救済法では、石綿ばく露の原因が仕事かどうかは問われません。そのため、職歴等については、アンケートを任意に提出するだけです。
一方、一人親方や事業主が、石綿救済法申請のために環境再生保全機構などに提出した書類は、国や建材メーカーに賠償金(給付金)を請求する時の資料にもなります。アンケートには、過去の職歴や石綿ばく露作業についてできるだけ詳しく記載し、関係証拠も保管しておきましょう。
何から手を着ければ良いか分からないという方も、まずはご相談ください。
私たち弁護団は、建設アスベスト訴訟の経験を踏まえ、国や建材メーカーへの請求も見越して、必要な聴き取りや証拠集めをサポートします。
よくある相談事例とポイント
建設現場で働いていたので、石綿による病気ではないかと心配です・・・1
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1まずは、診断からです。
主治医に、建設現場で働いていたことを伝え、石綿による病気かどうか聞いてみましょう。
医師から「アスベストが刺さっている」と言われました
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2「アスベストが刺さっている」と指摘された方は、「胸膜プラーク」があることが多いようです。
胸膜プラークは石綿を吸った証拠です。これ自体病気ではないとされていますが、中皮腫や肺がん発症等のリスク管理のため石綿健康管理手帳が交付される場合があります。詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧下さい。
中皮腫・石綿による肺がん・石綿肺等の診断を受けました・・・6
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3中皮腫と診断された方はどなたでも(石綿ばく露原因が不明でも)、石綿救済法による給付が受けられます。
申請から認定まで、最短でも3か月ほどかかります。労災申請と同時に申請することもできます(両方の制度から同時に給付を受けることはできず、後日給付調整がなされます)。
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4補償・救済を受けるためには、労災等の認定基準を満たす「石綿による肺がん」であるという診断が必要です。
肺がんは喫煙が原因と思われ、石綿が原因であることが見落とされやすいため、多くの方が救済から漏れている可能性が指摘されています。画像診断や手術中ビデオの確認によって救済が受けられる場合もあります。
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5石綿の病気は診断が困難な場合があり、間質性肺炎と診断されていても、実は石綿肺の場合もあります。
咳や痰・息切れなどの自覚症状がある場合は、専門医に診てもらうことをお勧めします。
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6労災保険もしくは石綿救済法による補償が受けられます。
中皮腫、石綿による肺がん、石綿肺などの診断を受けた方やそのご遺族は、一定の要件を満たせば、労災保険もしくは石綿救済法による給付が受けられます。
労災認定もしくは石綿救済法認定を受けました・・・8
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7石綿救済法認定者の約40%は、一人親方など建設現場で働いたアスベスト被害者です。
- 勤め先が倒産したり廃業したりして、事業主証明がもらえなかった。
- 親族が経営する事業場で働いていたために、労働者であったことが証明できなかった。
- 遺族には、被害者の仕事内容がほとんど分からない。
などの理由ですでに石綿救済法の認定を受けた方やその遺族の方でも、過去の職歴を見直し、労災認定(一般に石綿救済法よりも手厚い給付)を受けることができる場合があります。
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8労災認定・石綿救済法認定を受けた方やそのご遺族は、労災・石綿救済法の給付に加えて、国や建材メーカーから賠償金(給付金)を受け取れる可能性があります。
国や建材メーカーから賠償金(給付金)が受け取れますか・・・9
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9国や建材メーカーから賠償金(給付金)を受け取れる可能性があります。
また、国や建材メーカーへの請求とは別に、長年同じ企業に勤めていた場合や、独立して一人親方・個人事業主として専属下請けとなった場合など、勤め先企業や元請け企業に慰謝料等の請求ができる場合があります。