MENU

北海道建設アスベスト2陣訴訟、札幌地裁判決(声明)

2022.04.28

建材メーカー訴訟

2022年4月28日、札幌地裁民事3部(中野琢郎裁判長)は、北海道建設アスベスト2陣訴訟について、建材メーカー5社(エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイ)の責任を認める判決を言い渡しました。


建材メーカーの責任が認められたのは15回目です。

【声明】北海道建設アスベスト第2陣訴訟札幌地裁判決について(2022年4月28日)(pdf)


○テレビ北海道:建設アスベスト訴訟第2陣判決


                            2022年4月28日

声     明

北海道建設アスベスト2陣訴訟札幌地裁判決について

北海道建設アスベスト訴訟原告団

北海道建設アスベスト訴訟弁護団


1 本日、札幌地方裁判所(民事第3部 中野琢郎裁判長)は、北海道建設アスベスト第2陣訴訟について、被災者17名中11名のアスベスト被害に対する株式会社エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント株式会社、ニチアス株式会社、株式会社ノザワ及び株式会社エム・エム・ケイの合計5社の責任を認める判決を言い渡した。

2 既に最高裁は、2021年5月17日の判決において、建材メーカーらに警告表示義務違反があり、被災者のアスベスト疾患の主要な原因となった建材を製造・販売したメーカーのうち一定のシェアを有する建材メーカーらは民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負う旨の判断を示していたが、本判決はその判断を踏まえ、本訴訟の被災者11名に対する上記建材メーカーの責任を明確にしたものであり、その意義は大きい。

 本判決により責任があると判断された上記5社は、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められているにもかかわらず、未だに責任を争い、和解解決にも応じていない。そのような態度は極めて不当であり、速やかに責任を認めて被災者に謝罪し、早期に和解解決すべきである。

3 他方、本判決は、屋外作業を主とする職種については、国および、屋外建材等を製造販売したメーカーの責任を否定した。

 最高裁は、大阪第1陣訴訟、京都第1陣訴訟では屋外作業者に対する建材メーカーの責任を否定したが、九州第1陣訴訟においては、屋外用建材であっても屋内で切断等の作業をする場合があること等を理由として建材メーカーらの責任を認めた福岡高裁の判断を維持しており、その意味では、本判決が屋外作業者の作業の実態に踏み込む判断をしなかった点において、不当といわざるをえない。

 また、本判決は、解体作業従事者との関係でも、建材メーカーの責任を否定した。これまでの最高裁の判断では建材メーカーの責任は認められていないとはいえ、建材メーカーにおいて既設建材についても広く建設作業者等にアスベストを含有する事実とアスベスト疾患罹患の危険性等を周知することは十分可能だったのであり、それを怠ったことは明らかであるから、本判決の判断は、原告らとしては受け入れることはできない。

 さらに、一部の原告について、加害建材の現場への到達や原因建材からのばく露を否定しているが、かかる判断は不当である。

4 本判決は、有責とされた企業の責任割合を3割ないし5割と判断した。最高裁は、これまで有責企業が負う責任割合については、具体的な基準を示さず、下級審の判断に委ねてきたところではあるが、神奈川第2陣訴訟において、有責企業の責任割合を基本4分の3とする東京高裁の判断を維持した例もあり、本件において有責とされた企業がいずれも建材メーカーの中でも高いシェアを有し、建材メーカーの先頭に立ってアスベスト被害を拡大してきた経過を考えれば、本判決が認定した責任割合は十分とはいえない。

5 国は、建設アスベストの被害者救済のため本年2月から給付金制度を開始したが、屋外作業者はその給付対象から除外されている。

 国は、屋外作業者である被災者も屋内作業者と同様にアスベスト粉じんにばく露し、同様にアスベスト疾患に苦しんでいる事実を直視し、給付金の支給対象に屋外作業者を含める制度改正を速やかに行うべきである。

 また、建材メーカーらは、本判決によりあらためてアスベスト被害に対する加害責任が認められたことを踏まえ、その責任を自覚し、早期和解解決に応ずるとともに、速やかに基金制度創設に応じるべきである。

6 私達北海道建設アスベスト訴訟原告団・弁護団は、本判決を受けて全国の被災者、労働者、市民と連帯し、建設アスベスト被害者の早期完全救済とアスベスト被害の根絶のため、全力を尽くす決意をあらたにするものである。

以 上