2023.03.24
建材メーカー訴訟
2023年3月23日、京都地裁民事1部(松山昇平裁判長)は、関西建設アスベスト京都2陣訴訟について、建材メーカー5社の責任を認める判決を言い渡しました。
エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイの敗訴企業5社は、早期解決に向けてリーダーシップを取り、直ちに話し合いに応じるべきです。
○関西建設アスベスト京都2陣訴訟・京都地裁判決を受けた声明(2023年3月23日)(pdf)
○NHK京都:建設アスベスト訴訟 建材メーカー5社に賠償命令 京都地裁
○産経新聞:石綿、メーカーに賠償命令 京都第2陣、国とは先に和解
○京都新聞:建設アスベスト訴訟、5社の責任認め2億2400万円賠償命令 京都地裁
○ABCニュース:アスベスト京都2陣訴訟 一部の建材メーカーに賠償命令 京都地裁
○関西テレビ:建設現場のアスベストによる健康被害を訴えた裁判で賠償認める判決
声 明
2023年3月23日
関西建設アスベスト京都訴訟原告団・弁護団
1 本日、京都地方裁判所(第1民事部、松山昇平裁判長)は、関西建設アスベスト京都2陣訴訟において、被害者30名中24名(原告数43名中36名)のアスベスト被害に対する被告建材メーカーの責任を認め、メーカー5社に対して元本総額2億2445万9250円の支払いを命じる原告勝訴判決を言い渡した。
本訴訟は、建設現場でアスベスト含有建材から生じた粉じんにばく露し、肺がん・中皮腫等に罹患した建築作業従事者とその遺族が、アスベスト建材の製造販売メーカーに対し賠償を求めた訴訟である。被害者30名のうち、既に26名が死亡(提訴後死亡者8名)という現実が物語るように、その被害は極めて深刻である。
2 本日の判決は、最高裁が2021年5月17日の判決において示した判断、すなわち建材メーカーらには警告表示義務違反があり、被害者のアスベスト疾患の主要な原因となった建材を製造販売したメーカーのうち一定のシェアを有するメーカーらは民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負うとの判断を前提として、あらためて本訴訟の被害者24名(原告数で36名)との関係で建材メーカーの責任を明確にしたものである。
3 他方、本判決は、被害者6名について、建材メーカーの責任を否定した。そのうち3名は、主に解体作業に従事した被害者である。しかし、建材メーカーにおいて解体作業従事者との関係でも建材にアスベストが含まれる事実やアスベスト疾患罹患の危険性等を周知することは十分可能だったのであるから、この点についての本判決の判断は誤りであり、今後克服されなければならない。
また、本判決が、外装材に関しての被告の警告義務を否定したことは、その加工作業の屋内外を問わない危険性を無視するもので、不当な判断といわざるをえない。
4 本判決は、建材メーカーの違法期間を昭和50年10月1日から平成18年8月31日とした。
また、本判決は、おおむね10%以上のシェアをもってシェア上位企業と認定し、同シェアが認められる建材のメーカーについて建設現場到達事実を認定した。
5 本判決は、死亡した被害者について最高額2500万円の慰謝料額を認めたにとどまる。この点は、従来の基準を下回るものであり、不当である。
また、本判決は、有責とされた企業の基本となる寄与度については、2割ないし6割と判断した。神奈川第2陣訴訟において、有責企業の責任割合を基本4分の3とする東京高裁の判断を最高裁が維持した例もあり、本件において有責とされた企業がいずれも建材メーカーの中でも高いシェアを有し、建材メーカーの先頭に立ってアスベスト被害を拡大してきた経過を考えれば、本判決が認定した寄与度は十分とはいえないと考える。
6 被告建材メーカーは先の最高裁を含めて幾度も敗訴の判決を受けているにもかかわらず、未だに無益な争いを続け、早期の解決を一切拒否している。そのような態度は極めて不当であり、本判決により改めて加害責任が認定されたことを真摯に受け止めて、控訴することなく直ちに補償に応じるべきである。さらに、速やかに被害者に謝罪し、全面解決のための基金制度創設にも踏み出すべきである。
また、本判決では有責とされなかった建材メーカーも、深刻なアスベスト被害をもたらすことを知りながら、被害防止措置を講じないまま、アスベスト含有建材の製造・販売を続けてきたことにかわりはないから、アスベスト建材を製造販売したすべての企業はその責任を自覚し、基金制度創設による全面解決を行うべきである。
7 私達は、本判決を受けて、あらためて全国の被害者、支援者、および市民と連帯して、アスベスト被害者の早期完全救済と被害根絶のため、全力を尽くす決意である。
以 上