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首都圏建設アスベスト神奈川1陣訴訟、差戻審、東京高裁判決(声明)

2023.06.02

建材メーカー訴訟

建設アスベスト神奈川第1陣訴訟差戻審判決に関する声明(2023年5月31日)(pdf)


建設アスベスト神奈川第1陣訴訟差戻審判決に関する声明

2023年5月31日

首都圏建設アスベスト訴訟神奈川原告団

首都圏建設アスベスト訴訟神奈川弁護団

首都圏建設アスベスト訴訟統一本部

建設アスベスト訴訟全国連絡会

1(判決の結論)

 東京高等裁判所第2民事部(渡部勇次裁判長)は、本日、建設アスベスト神奈川第1陣訴訟(以下、「神奈川1陣訴訟」という。)の差戻審判決の言渡を行った。

 判決は、原告28名(被災者単位18名)の内、原告22名(被災者単位13名)の請求を認容し、ニチアス、A&A、MMK、太平洋セメントに対し、総額1億367万8664円の損害賠償の支払を命じた。

 ただし、判決は、原告6名(被災者単位5名)について、建材メーカーが製造、販売した建材の到達が認められないこと等を理由として、原告らの請求を棄却している。

 この点、事実としては、請求が棄却された被災者らについても、他の被災者らと同じく石綿含有建材を建設現場で使用し、石綿粉じんに曝露したことは疑う余地のないことである。しかしながら、何十年も前の過去の事実の立証という、個々の被災者の努力だけでは如何ともし難い大きな壁が、被災者らの前には立ち塞がっている。

 そのため、裁判所には、被災者本人には何ら責任のない大きな壁を越え、個々の被災者を救済しようとする真摯な姿勢が求められるところであるが、今回の判決には、そのような姿勢が必ずしも十分でなかったことについては、遺憾の意を表明せざるを得ない。

2(本判決の意義)

 建設アスベスト訴訟では、最高裁判所第一小法廷が、令和3年5月17日に判決を言い渡し、国及び建材メーカーに損害賠償責任が認められることを明確に示している。

 その後、昨年4月28日に北海道2陣訴訟札幌地裁判決、5月30日に北海道1陣訴訟札幌高裁判決、本年3月23日に京都2陣訴訟京都地裁判決が言い渡されているが、いずれも上記最高裁判決を踏まえ、ニチアス、A&A、MMK、ノザワなどの主要な建材メーカーに損害賠償責任を認めており、このような司法判断は、完全に定着するに至っている。

 その中で、東京高等裁判所第2民事部が上記最高裁判決の差戻審として、ニチアス、A&A、MMK、太平洋セメントの損害賠償責任を明確に認めたことは、これらの主要な建材メーカーの損害賠償責任を牢固たるものとするものである。

 なお、ノザワとの間では、去る5月19日、左官工として建築作業に従事した者を被災者とする原告4名(被災者単位4名)について、ノザワが上記最高裁判決の判断を厳粛に受け止め、原告らに対する謝罪を行った上で、相当額を支払う内容での和解が成立しているところである。

3(最後に)

 本年6月30日をもって、神奈川第1陣訴訟の提起から満15年が経過することになる。

 国との関係では、一昨年に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が制定され、訴訟を行わずに被害者を救済する制度が創設されたことで、確実に救済の実を挙げている状況にある。

 他方、建材メーカーとの関係では、先に和解に応じたノザワを別とすれば、建材メーカーらはいずれも和解協議に応じることすら行っておらず、給付金制度への参加については検討すら行っていない。

 今回の判決によって損害賠償を命じられた、ニチアス、A&A、MMK、太平洋セメントは言うまでもなく、これまで石綿含有建材を製造、販売し、建築作業従事者に深刻な石綿関連疾患発症の被害を生じさせてきた建材メーカーらは、今一度、自らの責任を真正面から受け止め、完全な被害救済のために決断することを強く求めるものである。

以 上