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お問い合わせ2023.10.11
建材メーカー訴訟
2023年10月10日、首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟の差戻審（東京高裁第24民事部）が結審。
増田稔裁判長は、本件は「和解解決が望ましい」とし、判決日は追って指定として、和解を試みることを明らかにしました。
東京1陣訴訟は、提訴以来すでに15年。すでに多くの原告が亡くなっています。
建材メーカーは、裁判所の和解勧試を真摯に受け止め、原告らとの和解協議に応じるべきです。
○声明（東京1陣訴訟差戻審結審にあたって）（2023年10月11日）（pdf）
声 明
（東京１陣訴訟差戻審結審にあたって）
１ 本日、建設アスベスト東京１陣訴訟の差戻審（東京高等裁判所第24民事部）は結審し、判決言渡期日は指定されず、追って指定するとされた。同時に、東京高裁第24民事部の増田稔裁判長は、「本件の事案に鑑み、和解勧試します。和解の進め方は後日双方にご連絡します。」と述べた。裁判所は本日の法廷で双方に対して和解を試みる（和解勧試）ことを宣明した。
２ 一審原告らは、2008（平成20）年5月16日に、国及び一審被告メーカーらを被告として東京地裁に提訴して以降13年の審理を経て、2021（令和３）年５月17日に４つの最高裁判決を得た（東京1陣、神奈川1陣、京都1陣、大阪1陣の各訴訟判決）。
この4つの最高裁判決は、国の国家賠償責任を肯定するとともに、建材メーカーらに対しても、石綿建材を製造販売する際に当該建材が石綿を含有しており当該建材から生ずる粉じんを吸入すると肺ガン・中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を表示する義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかった過失があること、民法719条1項後段が類推適用されて一審被告メーカーらには共同不法行為責任が成立する場合があると判断した。
３ 差戻前の東京高裁判決が、一審被告メーカーらの製造販売した石綿建材が本件被災者の作業する現場に相当回数到達していたとの事実（建材現場到達事実）が立証されていないとした判断を、東京１陣最高裁判決は、経験則又は採証法則に反する違法であるとした。そして、同最高裁判決は一審原告らの本件立証手法により石綿建材について建材現場に到達したことを立証し得るとして破棄し、同訴訟を東京高裁に差戻した。この差戻を受けた当審（差戻審）は２年半にわたる審理を経て本日結審を迎えたのである。
４ 一審原告らは、最高裁判決が指摘するとおり一審被告メーカーらの石綿建材は被災者らが作業した現場に到達したことが認められると考えており、一審被告メーカーらの共同不法行為責任が肯定される判決が言い渡されるものと確信している。
しかしながら、差戻審で一審原告らが勝訴判決を得ても、一審被告メーカーらは、さらに最高裁に再度上告して紛争を長引かせることが十分に予測される。現に、神奈川1陣訴訟差戻審では、一審被告ノザワ１社のみが和解に応じたが、他のニチアスら一審被告メーカーら４社は、2023年５月31日の神奈川１陣差戻審の東京高裁（第２民事部）判決に対して、再び最高裁に上告受理申立をしているところである。
５ 東京１陣訴訟の一審原告らは被災者単位で286名にのぼる全国の類似訴訟で最も規模の大きい訴訟である。提訴以来、15年も経過し、現に生存している被災者である一審原告は30名弱を残すだけとなっている。被災者である一審原告らの命あるうちの解決は司法関係者の使命というべきである。本差戻審の裁判官らも、この実情を熟慮して、結審にあたり「和解解決が望ましい」と述べたものであろう。
６ また、東京1陣差戻審において一審被告メーカーらとの間で和解が成立すれば、建設アスベスト給付金法の改正に大きく寄与することになる。すなわち、国との関係では、いわゆる建設アスベスト給付金法が成立し、この１年半の間に約5000名を超える被害者が認定されて国との関係では建設アスベスト基金から給付金が支給されている。しかし、過失がある建材メーカーらとの関係では、建材メーカーらは基金に拠出することを拒んでおり、未だにに全国で訴訟が係属している。
全国の訴訟中で被災者数が最大規模であり、建設作業の職種も多岐にわたる東京1陣訴訟において、建材メーカーらとの和解が成立すれば、建材メーカーらも参加する建設アスベスト補償基金制度を創設する大きな前進となることが期待できる。
７ われわれは、東京1陣差戻審の和解勧試の方針を高く評価する。そして、一審被告メーカーらに対して真摯に和解協議に応じることを呼びかけるとともに、政府、国会議員、国民の皆さまに和解成立に向けての支援と協力を呼びかけるものである。
2023年10月10日
首都圏建設アスベスト東京１陣訴訟原告団
首都圏建設アスベスト東京１陣訴訟弁護団
首都圏建設アスベスト訴訟統一本部