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首都圏建設アスベスト神奈川2陣訴訟、差戻審東京高裁決(声明)

2024.06.07

建材メーカー訴訟

2024年5月29日、東京高裁第23民事部(館内比佐志裁判長)は、首都圏建設アスベスト神奈川2陣訴訟の差戻審において、築炉作業に従事した被害者との関係で、ニチアス、A&AMに対する責任を否定する不当判決を言い渡しました。

建設アスベスト神奈川2陣訴訟・東京高裁判決(差戻審)に関する声明(2024年5月29日)(pdf)


 建設アスベスト神奈川第2陣訴訟・東京高裁判決(差戻審)に関する声明

2024年5月29日

首都圏建設アスベスト訴訟神奈川原告団
首都圏建設アスベスト訴訟神奈川弁護団
首都圏建設アスベス訴訟統一本部
建設アスベスト訴訟全国連絡会

1 差戻審高裁判決の結論

 建築現場における作業を通じて石綿粉じんに曝露し、中皮腫や肺がんなどの石綿関連疾患を発症した被災者及びその遺族が、国と石綿含有建材製造企業(以下、「建材メーカー」という。)を訴えていた建設アスベスト神奈川第2陣訴訟について、東京高等裁判所第23民事部(館内比佐志裁判長)は本年5月29日、原告2名(被災者単位1名)のニチアス及びA&Aに対する損害賠償請求を棄却する判決を言い渡した。

 本判決は、最高裁判所第2小法廷が令和4年6月3日に言い渡した判決において、建物の解体作業に従事した被災者との関係で、建材メーカーらの警告義務違反を認めた東京高裁判決を取り消した差戻審としての判決である。

2 高裁判決の理由

 最高裁判所第2小法廷が建物の解体作業との関係で、建材メーカーらの警告義務違反を否定したことから、本差戻審では、本件の被災者が従事した築炉作業において、ニチアス及びA&Aが製造した保温材が被災者に到達したか否かが主要な争点となった。

 この点について、東京高等裁判所第23民事部は、ニチアス及びA&Aが製造した保温材を被災者が現場において使用していた可能性は否定できないが、使用する頻度が高かったということは困難であるとし、ニチアス及びA&Aに民法719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任の成立を認めることはできないと判断した。

 本判決は、ニチアス及びA&Aが差戻審の段階になって新たに主張した、保温材の細かな特徴や使用状況に関する内容を事実として認めるものである。

 このような本判決の判断は、本件の被災者が差戻審の段階になって死亡し、被災者本人の本人尋問を行うことができなくなった状況で、企業らの主張を安易に事実として認めるものであり、これまで建設アスベスト訴訟において積み重ねられてきた、被災者の立証困難を救済する途を閉ざす不当な判決である。

3 最後に

 建設アスベスト訴訟では、最高裁判所第1小法廷が令和3年5月17日に、国及び建材メーカーらの損害賠償責任を明確に認める判決を言い渡している。

 そして、国はこの最高裁判決を真摯に受け止め、係属中の訴訟を和解により解決するとともに、新法による給付金制度の創設を行い、7000名に迫る被災者と遺族を救済している。これに対して、建材メーカーらは全国各地で係属中の訴訟において、自らの損害賠償責任を争う姿勢を全く崩しておらず、裁判所からの勧告があっても、和解協議に真摯に応じることすらしていない。

 建設アスベスト訴訟は、平成20年の提訴以来16年が既に経過しており、この間に多くの被災者が亡くなっている。そのため、早期解決による被害者の救済と表現するには、時機を完全に逸した状況にあるが、それでも1人でも多くの被災者が健在の内に、全ての被災者の十分な救済を実現する必要がある。

 本判決は、被災者本人が亡くなったことで、ニチアス及びA&Aの主張に対する有効な反論をすることができない状況で判断されたものであり、建設アスベスト訴訟において積み重ねられてきた建材メーカーらの損害賠償責任を些かも揺るがすものではない。

 ニチアス及びA&Aをはじめとした建材メーカーらにおいては、提訴以来、多くの被災者が亡くなっているという現実を改めて真摯に受け止め、被災者と遺族を真に救済する給付金制度の実現に向けて、今度こそ誠意ある対応をするように強く求めるものである。

以上