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九州建設アスベスト2陣訴訟、福岡地裁で勝訴判決(声明)

2024.06.28

建材メーカー訴訟

2023年6月27日、福岡地方裁判所第6民事部(上田洋幸裁判長)は、九州建設アスベスト2陣訴訟について、建材メーカー5社の責任を認める判決を言い渡しました。

敗訴企業は、早期解決に向けてリーダーシップを取り、直ちに話し合いに応じるべきです。


九州建設アスベスト2陣訴訟 福岡地裁判決 についての声明(2024年6月27日)(pdf)


九州建設アスベスト2陣訴訟 福岡地裁判決 についての声明

                     

 2024(令和6) 年6月27日

九州建設アスベスト訴訟 原告団・弁護団


1 本日、福岡地方裁判所 第6民事部(上田洋幸裁判長)は、九州建設アスベスト2陣訴訟で原告勝訴の判決を言い渡した。

  勝訴の内容は、被害者24名中20名(原告数65名中55名)について被告建材メーカーの責任を認め、被告建材メーカー5社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、ノザワ、太平洋セメント、エムエムケイ)に総額1億4819万7500円の支払を命じたものである。

2 本件は、建設現場でアスベスト建材から飛散した石綿粉じんにばく露し、肺がんや中皮腫などの重篤な疾患を発症した建設作業の従事者やその遺族が、アスベスト建材メーカーに賠償を求めたものであり、全国各地の建設アスベスト集団訴訟のひとつである。

3 本判決は、2021(令和3)年5月17日の最高裁判決の判断、すなわち、各被害者の疾患原因と評価されるアスベスト建材の市場で一定のシェアを有していた各建材メーカーの警告表示義務違反は共同不法行為であるという判断を踏まえて、 前記建材メーカー5社の共同不法行為責任を明らかにした。

  とりわけ、本判決では、建材種類ごとにシェアを判断しており、原告らの主張を的確に踏まえた内容であり評価できる。

   また、本判決は、到達を認めることができる建材のシェアについて、原告らの主張のとおり10%を合理的なものとして採用しており、かかる判断を定着させた点においても評価できる。  

4 他方で、本判決は、建物解体作業に従事した被害者1名(原告2名)について、建材メーカーの責任を否定した。

  建材メーカーが、自社建材にアスベストが含まれていて重篤な疾患を引き起こす危険があることを警告していれば、解体作業従事者の被害も十分に避けられたというのが真の実態であり、警告を怠りつづけていた建材メーカーの責任を否定するのは誤りである。

5 また、本判決は、被害者1名(原告4名)について、屋外作業の石綿粉じんばく露が原因であるとして建材メーカーの責任を否定した。

  しかし、屋外作業でも石綿粉じんばく露の危険性を予見することはできたことは明らかであり、責任を否定したのは誤りである。

6 さらに、本判決は、被害者2名(原告4名)について、被告建材メーカーのアスベスト建材が各被害者の作業現場に相当回数にわたって到達していた点が立証されないとして、請求を棄却した。

  しかしながら、すでに提出している関係証拠によって前記到達の点の立証は果たされている。

  アスベスト粉じんの吸入から疾患発症までに数十年の潜伏期間があり、前記到達の点の立証では数十年前のことが対象となる。この立証負担が過重となっている被害者や遺族は少なくない。被害者を安易に切り捨てない認定判断が求められる。

7 本判決では原告らのほとんどが勝訴した。少なくとも前記最高裁判決の後では、原告勝訴は想定されていた結果というほかない。

  とりわけ、エーアンドエーマテリアル、ニチアス、ノザワの3社は、建設アスベスト集団訴訟における敗訴企業の常連であり、今後の発症者を含めた建設アスベスト被害者に対する責任から逃れられない。

  この3社は、すべてのアスベスト建材メーカーをリードして、建設アスベスト被害の全面解決にむけた取組みをはじめなければならないし、これ以外の建材メーカーも、この取組みに積極的に協力、参加するべきである。具体的には、国がすでに設置している「特定石綿被害建設業務労働者等給付金等支払基金」に建材メーカーからも資金拠出を行い、現在は国の責任分のみが支給されている給付金に建材メーカーの責任分を上乗せする制度拡充を図るべきである。

8 建設アスベストの被害者やその遺族らが塗炭の苦しみを味わってきたのに対し、建材メーカーは話し合いのテーブルにもつこうともせず、逃げ得をはかっているとしか思われない態度に終始している。

  裁判では、すでに決着がついているような点でも徹底的に争って被害者に大きな負担をかけつづけ、このような負担のために提訴を躊躇している被害者については、あたかも被害そのものが存在しなかったとして取り扱って何らの賠償もしない。この構造こそ、建材メーカーの逃げ得にほかならない。

  私たちの社会全体で、建材メーカーに対し、このような逃げ得が許されないことを明確に突きつけていかなければならない。

  そのために、私たちは、全国の被害者、支援者、市民らと連帯して引き続き全力を尽くしていく所存である。

以 上